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カドコラム総集編——学び続ける日々

更新日:3月22日

川崎学舎へようこそ!

門野坂(かどのさか)です。


学舎の月間予定表には、僕が書くコラム=カドコラムが掲載されています。

子どもたちとの関わりの中で、僕が日々暮らしていく中で、感じたことを綴っています。


このブログでは2024年度のカドコラムを抜粋して、総集編をつくりました。

川崎学舎の雰囲気やスタンスを掴むきっかけになると思うので、目を通していただければ嬉しいです。


2024年|4月「どんな本からでも学べる」

 僕、読書が趣味なんです。普段は新書を読んでいるような堅苦しいヤツなんですが、2月はひさびさに『モモ』『夢十夜』『銀河鉄道の夜』といった小説にも手を伸ばしました。いやあ、大人になってから読む小説は考えさせられますね~。特に『モモ』からは、自分が何を大切にしたいのかを深く問われた気がします。その結果、やっぱり僕は学舎の生徒たちに、いろいろなことに考えを巡らせる子になってほしいと願っているんだと思い返されました。新学年になるタイミングで、僕から1人1冊、本を貸し出したいと思います!願いを込めて、1人ずつ本を選びますので、どんな本が選ばれるのか、ぜひ楽しみにしていただければと思います。それでは、新学年もよろしくお願いします!

ミヒャエルエンデ『モモ』|川崎学舎の本棚より

2024年|5月「向き合うことでじんわり伸びる国語力」

 春休み特別企画として、小学5年生は「ビブリオバトル」という本の紹介をするスピーチ大会を行いました。5年生たちが紹介してくれた本のラインナップは『レ・ミゼラブル』『モモ』『星の王子さま』『走れメロス』『歴史ゴーストバスターズ』『ラストサバイバル』と続き、小5のみんなが1番読みたくなったチャンプ本には『ラブカは静かに弓を持つ』が選ばれました!

 このコラムを書いている今も、チャンプ本を紹介した彼が、文章の内容を僕の目の前で説明してくれているのですが「本当に説明力ついたなぁ~」ってひしひしと感じます。国語は、英語や数学に比べると成果が見えづらく、時間もかかる科目です。ですが同時に、きちんと向き合えば確実に伸びていく科目でもあります。本の紹介や作文などのイベントをきっかけにして、楽しみつつ、今後も国語力を伸ばしていってほしいなと願っています。P.S. 最近は『歯車』『変な家』『大喜利の考え方』『善良と傲慢』を紹介してもらったので、るんるん読んでいます。もちろんチャンプ本も買いました!オススメの本があれば、ぜひ紹介してくださいね~

川崎学舎の自習室の様子

2024年|6月「集中力の価値に今、気づく」

 中学生のころって、何時間くらい勉強していましたか?正直、中学当時の僕は1時間も集中できなかったんじゃないかと思います。2時間も勉強できた日には、自分の中では充実感に満ち満ちていました。15歳の僕、めちゃくちゃハッピーな脳内でした(笑) 大人になった今、「ああ、そんなじゃダメだったな」と痛烈に思わされます。何日も何日もかけて、1つのものをつくりあげる機会が多くなったからです。そのタスクに取り組んでいる最中は、物事が進んでいるんだか進んでいないんだかよくわかりません。物事を細分化して、なんとか進歩感を得ようと試みる日々です。

 そういったとき「中学時代から集中力を磨いていれば、今頃どれだけ成果を出せていただろうか」と嘆きたくなっちゃいます。GW特訓で14時から勉強に取り組み、20:40~22:00にある僕の最終コマ(しかも中3国語の授業内容は、退屈であろう古典文法…!) まで淡々と授業を受ける中学生は、将来、日数を要する大きなプロジェクトを任されたときにも、粘り強く取り組む素質が身につくんだろうなと思います。はーあ。今になって、集中せざるを得ない環境があるのうらやましいなって思うな!人生あとから後悔することだらけだな!!

川崎学舎の勉強風景

2024年|7月「本音全開でええんやで」

 漢字テスト実施日に、「漢字テストクソだる~!!」って叫ぶ小学生女子がいます。ホント、降水確率で言うと80%くらいの割合で叫んでいるんですよね(笑) 自分が思ったことを率直に言える環境だと捉えてくれていることが嬉しいですね。結局、グワーッって書き殴って、厳しめに設定した合格ラインでもたいていは超えてくれます。そうそう。この雰囲気が学舎なんやで。思いっきり、自分全開でいてな~。

川崎学舎の出入り口

2024年|8月「子ども時代の願望は抽象的で良い」

 もっともっといろんな生徒の話を聴きたいという思いから、カウンセリングの資格を取ってみました。簡易的なものではありますが…!「運動会だった」「推しが尊い」「ディズニー行った」「部活の外周がキツイ」「楽しみにしているコンサートがある」「中華街にインタビュー行ってきますッ!」「サッカーで2点決めた。相手弱いけど」などなど、学舎の子たちは勉強以外のこともたくさん話してくれます。

 過去の生徒たちを振り返ると、口下手ながらも、内に自分の思いを秘めている子が多いんですよ。ガッツの青い火が内在していると言いますか。綺麗で具体的な目標にはならないけれど、なんとなく抱いている理想の姿。そういう抽象度の高い願望は、さりげない会話の中から見出されることが多いんですよね。「日々、充実感を持って生きていたい」「もっと面白いと思うことを追究したい」「人に納得してもらえるようになりたい」具体的な日々の経験を積み重ねて、だんだんと自分の価値観をぼんやり発見していく。受験はもちろん、大まかな生き方の見通しを持てるような寄り添い方ができる先生になりたいなぁと、願っている日々です。

『君の声が聴きたい』

2024年|9月「読書の夏。心の浮遊」

読書の秋という言葉は、川崎学舎では適応されていません。むしろ、読書は夏休みじゃろ!!というゴッツ体育会系な雰囲気が流れています。小学5年生には読書感動文orエッセイ、中学3年生の一部には「1日5分読書」が宿題として課されている影響もあります。それ以外には、春休みに貸した本を学校でコツコツ読み続けて、夏休みにようやく読み終わったという子たちがチラホラいることも影響しています。さらに、僕自身が子どもを通して保護者の方から本を借りている影響もあり(ありがとうございます!)、夏休みは本を通して交わされる対話が同心円状に広がっていく喜びを実感しています。

「勉強しなくて後悔した」は聞いたことがあるけれど、「勉強しすぎて後悔した」を聞いたことがないんですよね~。同様に、「本を読みすぎて後悔した」ことも、僕は経験上ないんです。だからもし、な~んもすることがなくて持て余している子がいるんだったら、ぜひ本を読んだらいいんじゃないかなって思います。学舎の本棚には有り余るほどの本があるし(笑) 最近読んだ中では『深夜特急』なんてとてもよかったな。海外を旅する小説です。読書期間中は、川崎にいながらインドや香港の匂いを嗅いでいたし、なんとなく浮ついた気分だったな。

川崎学舎の本棚

2024年|11月「想いを馳せる時間」

川崎学舎の扉を開けると、真っ先に目に飛び込んでくるのが受付机です。お気に入りの本に囲まれながら、僕はこの白い机で作業しています。学舎に着くとまず、僕は本棚の前に立ちます。生徒向けに飾る1冊の本を選ぶためです。僕の座っている受付机から、教室の方面へ向けてイーゼルを置いており、選ばれた本はそこに置かれます。生徒たちは、木目調のイーゼルの上に置かれた書籍をチラッと横目に帰っていきます。大抵の場合、飾られた本に触れられることはありません。ただのオブジェクトです。

それでも、僕は意味を込めて本を選びます。劣等感を抱いている君に『鼻』を。体調不良で心が落ち込んでいる君に『檸檬』を。作業に追われている君に『モモ』を。存在意義を問う君に『ソラリス』を。破天荒な生き様の君に『坊ちゃん』を。目に見えない大切なものに気づいてほしい君を想って『星の王子様』を選ぶのです。

本棚を見ながら「今日は誰が来るかな」「この子にはどんなことがあったかな」と考えます。子どもたちに想いを馳せる時間の経過こそが、僕を先生にしていくのです。選ばれた本は、君たちへの願いであり、僕にとっての決意なのです。

宮沢賢治『銀河鉄道』|川崎学舎の本棚

2024年|12月「他者の言葉。自分の言葉」

今日、僕はイヤホンを忘れて家を出てしまいました。移動中はいつも、Audibleで本の朗読を聴いているのですが、ひさびさに街中の音に耳を傾けながらの出勤です。最寄り駅までは、20分ほど歩きます。情報収集と考えると短い時間ですが、歩く時間と捉えると長い時間です。周りの音に耳を済ませていたつもりが、気づくとコラムで何を書くかを考えて始めていました。自然と思考が流れ始めたとき、初めて自分が何を考えていたかに気が付きます。

せかせかと忙しい日々でも、無理してゆとりを持つ時間、スキル向上に充てない時間、スマホを見ない時間をつくることは大切だと感じました。いつしか「他者の言葉」が「自分の言葉」より大きくなり、自分の考えが湧き起こらなくなってしまうと思うからです。やることはきちんとやってほしいと思いつつ、自分ならではの思考に出会うためのゆとりある時間感覚までは手放さないでほしいです。友達と別れふと一人になったとき。学舎から自転車で帰る只中。間隙が生む、自分と出会う豊穣な余白を存分に味わってほしい。自戒の念を込めて。

川崎学舎の駐輪場

2025年|1月「利己的で、思いがけず利他」

『思いがけず利他』という本を読みました。本書では、「誰かのために行動しています」という感じを出し過ぎると、逆に「それって自分のためにやってるんじゃないの?」と見られてしまうパラドックスが指摘されています。わかる!特に教育の場面では、この現象が起こりやすい気がします。中2と定期テストの予定を組んでいたら「計画ニキ」と名づけられ、不覚にも笑ってしまいました。時間の使い方には悩んだからこそ、図々しくアドバイスしてしまいがちなんですが、「あなたのためだから!!」という重さを出し過ぎない塩梅が難しい。同じ受験でも、人によって悩みは千差万別です。利己的に——自分のために学んだことが、思いがけず利他——子どもたちのためになったなら嬉しいなと思います。結果を出すという目的は忘れず、対話しながら彼ら1人1人に合う形を提案・調整できる人でいたいものです。

『思いがけず利他』|川崎学舎の本棚より

2025年|2月「他者と話すために学び、学びを深めるために他者と話す」

文系大学院で学んだ経験がある人って少ないですよね?多くの人がイメージするものとは全く別の価値観で勉強する場なんです。今回は、僕が大学院で体験した学びのスタイルを3つご紹介しますね。

1つめはゼミでの勉強です。ゼミは、少人数制の研究会です。先生のもとに3~6人の学生が集まり、それぞれの研究テーマを発表し、意見を交わします。僕が所属していたゼミでは、毎週のように「こんな文献を読んだんだけど、僕はこう考えた」「え、私は——」といった話が飛び交い、意見がぶつかることで視野が広がる瞬間がたくさんありました。

2つめは自主的な勉強会です。大学院では、「自分たちで学びの場を作る」のも特徴です。ホワイトボードのある部屋を自由に使える環境で、僕は教育書の読書会や心理学の勉強会を主催していました。同じ本を読んでも、背景が違うと見方も変わるんです。「その視点、考えたことなかった!」という発見がたくさんありました。

3つめは少人数制の授業です。僕がいた大学院の授業は、5~20人程度の少人数で行われます。先生が一人ひとりの意見を聞いてくれるので、授業というより座談会に近い雰囲気でした。難解な文章も、対話を通じて理解が深まる瞬間が多かったです。こうして考えを共有することで、学びが楽しくなるんですよね。

大学院に入って、僕の勉強観は大きく変わりました。みんなと同じ内容を覚えて勉強は終わりじゃない。内容を正確に理解したら、他者に語れるレベルで内容をまとめて、自分なりの見解を共有することで、勉強をきっかけにした対話が生まれていく。難しいこと言ってるのは分かるけど、ここまでやれば勉強は楽しいと思うんです。「人と話すために学び、学びを深めるために人と話す」これが、僕が大学院で感じた学びの本質でした。

川崎学舎の教室の様子

2025年|3月「与えられた概念に適切な具体例を充てる」

国語力が高いというのは、具体例を適切に当てる力があるということだと思います。たとえば、「継続が大切」という趣旨の文章が与えられたときに、「毎日鉄棒に取り組んでいたら逆上がりができるようになった!」とか「毎朝欠かさず英単語を見ていたらだんだん覚えられるようになった」というエピソードを挙げられるかどうかが、国語力を測る一つの指標になるのです。ところが、よくあるのが「サッカーが好きだから上手くなった」というように、“継続”の話ではなく“動機”として語ってしまうケースです。テーマが「継続の大切さ」であるにもかかわらず、別の観点にすり替わってしまっているため、具体例としては的外れになってしまいます。

「他者との比較ではなく、過去の自分と比較する方が良いですね」と述べられた文章に対して、なかなか良い具体例が思い付かず困っている子がいました。勉強の話題でも、足の速さの話題でも、常に他者との比較で語ってしまうのです。僕は、さまざまな具体例や寓話『ウサギとカメ』などを用いて説明を試みましたが、なかなか理解してもらえませんでした。そこで、「小学3年生の自分と比べて今の自分の足の速さはどう?」「学舎に入ったばかりの頃と比べて勉強はどう?」といったように、彼自身の具体例に置き換えると、ようやく理解でき、自分の言葉で語れるようになったのです。

中学2年生以降になると、論考の対象が社会的・歴史的で抽象度の高いものになり、自分の具体例を当てはめるのが難しくなることも多いでしょう。しかし、少なくとも小学生から中学1年生までの間は、こういった経験をたくさん積むことが大切だと思います。⑴ 上手な具体例を当て、⑵ 自分の言葉で語るためには、対面で対話を重ね、少しずつ思考を促していくことが不可欠です。何年経っても、思考力が深まる過程に携われることは、僕の生き甲斐です。

川崎学舎の授業風景

いかがだったでしょうか。

僕自身、日々自分ができることは何かと省察しながら生きています。


川崎学舎で教えることを選んだきっかけも「とことん向き合う。最後まで。」という理念のもと、少人数制というディープに関われる環境に憧れたからです。


今年度は定員いっぱいに小学生の子たちが集まっています。

本当に有り難く、身が引き締まる思いです。


ゆたかになれる学びを提供すべく、新学年も精進いたします。

これからどうぞよろしくお願いいたします!


門野坂翔太

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